これがカルチョだ!だ!だ!

すばらしい。
6月26日のワールドカップトーナメント1回戦、「イタリア対オーストラリア」はいつも以上のイタリアサッカー(カルチョ)で、90分間目が離せませんでした。


でも多分、この試合を見て「つまらない試合」と表現する人は少なくないだろうな。
そういう人には、リーガ・エスパニョーラ(スペインリーグ)をお勧めしておこう。

「イタリア人の理想とするサッカーは?」

かつて、セリエAのトップチーム・ユベントスの会長(だったかな?)が「あなたの理想とする勝ち方は?」との質問が投げかけられたとき、彼はこう答えたという。


「90分間攻めに攻められて、どう考えても相手の勝ち試合だったのに、しかし1度もゴールを割られることがなく進行し、後半も終わり間際に、審判のミスジャッジでPKがもらえて勝てたら。相手チームの悔しがる顔が目に浮かぶようだよ」


まさにその通りの試合展開。
オーストラリアを応援した人には悪いけど、感動に打ち震えました。

前半18分・ガットゥーゾの好判断

オーストラリア(ケーヒルだったかな)がスローイングからのこぼれ球を拾ったシーン。
対峙したガットゥーゾは「シュートが来る」との判断から体を投げ出し、大成功。
シュートではなく、パスやドリブルなら交わされて危機に陥ったかも知れない判断だけに、この勇敢な判断には思わず脱帽。

前半24分・ブッフォンの豪腕

ペナルティエリアからオーストラリア・ビドゥカがシュート。
これをセーブしたブッフォン、こぼれ球につめてくるオーストラリア選手からボールを守るために、右腕一本でボールを抑える。
これに、オーストラリアの選手がつめてくるが、もうボールはピクリとも動かない。
ブッフォンの右腕は、足よりも強い。

後半6分・マテラッツィの退場

マルコ・マテラッツィといえば、イタリア一の暴れん坊。
試合中の暴言やら、暴力行為やら、ことあるごとに切れてピッチから居なくなることで有名。
いや、ディフェンダーらしからぬ得点能力とか、体格を生かした堅実な守備とか、いいところもいっぱいあるんですが。
後半4分にオーストラリア選手との接触プレーで、お互いの肘が当たったことと、そのプレーをオーストラリアの選手がアピールしたことに対し、ちょっと怒っていました。
で、「ヤバイな、マテラッツィ絶対切れるよ」と思っていたら案の定。
まさか直後の退場とは…トホホ(´Д`;)

後半21分・ピルロのFK。後半30分・トッティ登場

後半、特にマテラッツィが退場してから、10人で守りに入ったイタリアが、カウンターをかけてもシュートを打たなくなった。
今大会はミドルシュートの祭典と言われるが、イタリアはそれに反して、なぜかペナルティエリアまで必ず持っていく。
そうして、ペロッタやトッティが必ずペナルティエリアでボールを回す…
退場者が出て一人少ない状況では有効なシュートが打てるスペースは無くなる。
相手ディフェンダーを引き離すオトリが使えなくなるからだ。
しかし、サッカーのルールでは、残り人数に関係なく、審判がフリーで蹴らせてくれるチャンスをくれることがある。
そう、PKとFKだ。

後半30〜40分・オーストラリアの猛攻。後半36分アロイージ投入(オーストラリア)

おそらくヒディンクは延長戦を見据えていたと思う。
交代枠は現状打破ではなく現状維持のために使用した。
オーストラリアの攻撃はすばらしかった。
しかし、ブッフォン・カンナバロを中心としたイタリアの守備は、現時点での世界の頂点にあった。

後半45分・ザンブロッタの時間稼ぎ。

後半42分からのイタリアのカウンターは不発でFWイアクィンタもファウルを誘えず、オーストラリアのカウンターが始まろうとした瞬間。
イタリアDFザンブロッタがセンターサークル付近でオーストラリアに対し、まずファウルとなるタックルで試合を止める。
ただそのままでは、オーストラリアの選手はすぐにボールを蹴りだして、早いリスタートからゴールを狙われてしまう!
味方のMFたちが自陣に戻る時間を稼がなければならない。どうする!?
なんと、ザンブロッタはボールを手で拾って逃げた。リスタートさせないために。
もちろん、この行為は反則だ。結果はイエローカードだか、レッドカードでもおかしくない。
だが、カードと引き換えに1点を封じたこのプレイこそ、勝利への執念だ。
宮本、見習え。


ちなみに、同様の行為は中田英もやったことがある。
日本がゴールを決めた直後、相手チーム(確か韓国じゃなかったか)が、すばやくセンターサークルからキックオフして反撃に移りたいのだが、中田英が頑としてセンターサークルから出ない。
キックオフの際、センターサークルに関係の無い選手が入っているとプレイが再開されないことを利用していたのだ。
ゴールを決めた日本選手が自陣に引き上げてくるまで、中田英は相手のキックオフを封じたのだ。

後半48分・グロッソの突破

いろいろ言われただろう。
だが、審判が笛を吹いてしまった以上、あれは間違いなくPKだ。
グロッソが倒されて審判が笛を吹いた瞬間、グロッソが「やったぜ!」の顔で笑う。
そう、あれは半ばシミュレーション(ファウルと勘違いされるようにわざと倒れること)だったのだ。
ただシミュレーションとは取れないはずだ。
グロッソが倒れたのは、間違いなくスライディングしてきたオーストラリア選手が前に居たからだ。
だからあの場面、審判の取る行動は2択だった。
「シミュレーションを見抜いて笛を吹かないか」「笛を吹いてPKを与えるか」
結果は後者だった。

後半50分・トッティのゴール(PK)

こんなにプレッシャーのかかる場面でのPKは近年まれだと思う。
ドイツワールドカップではシルバーゴールゴールデンゴールも認められない。
延長戦に入ったら、10人だろうがけが人が出ようがあと30分間、戦わねばならない。
いかにイタリアの守備が鉄壁とはいえ、あと30分間も10人、しかも交代無しで守りぬけるかは疑問だ。
トッティは決めなければイタリアは敗退していた。
日本人なら絶対に外しそうな気がする。中田英とか(外したことがある)。
トッティは冷静に決めて、イタリアを8強に導いた。

イタリアの次戦

ウクライナ戦になります。
万全ならイタリアが圧倒的に格上。
しかし、イタリアは満身創痍です。
DFの要、世界一堅い男・ネスタ(脚注参照)を故障で欠き、その代役のマテラッツィもレッドカードで次戦出場停止。
中盤の期待の若手、デ・ロッシも4試合出場停止中と、ボロボロです。
がんばれ、アッズーリ。
あるいはシェフチェンコ
イヤイヤイヤ (*^▽^*)ゞ


カルチョファンからちょっと質問がありました。
ガットゥーゾザンブロッタも予選リーグでイエローカードを受けていましたが、オーストラリア戦のイエローカードで累積出場停止ではないのですか?」


答え)
ドイツ大会では予選リーグのイエローカードはトーナメントに入る前にクリアされます。
予選リーグから本戦に持ち越されるのは、出場停止処分だけというルールになっています。
たとえば、グループリーグ最終戦で、2枚目のイエローカードを貰って次戦出場停止になった選手は、その出場停止処分はトーナメント一回戦に持ち越されますし、イタリアのデ・ロッシのように特に悪質な反則で4試合出場停止などを受けた場合もトーナメント戦まで持ち越されますが、カードはすべて帳消しになります。